「新しく生きる」
入院時 紙のように白かった顔は
赤みをおびていた
彼の首もとには、酸素吸入の為の
新しいホールが突き出ている
*
7月27日早朝、緊急入院した彼は
気胸と肺炎も併発。
鼻からの人工呼吸器では、タンがつまりやすく
いつ、呼吸停止してもおかしくない状況だった
出かける準備をしてると、私の電話が鳴る
不安をあおる電子音
彼の緊急入院を告げる内容だ。
直ぐに来られますか?
はい、1時間ほどかかります
酷暑を避け、バスと電車で最寄駅に向かう
降りるひとつ前の駅で、又、電話が鳴る
病院のひとつ手前の駅です
病室に着くと、鼻から直接チューブが入り
口にも太いのど奥下までのチューブがそうかんされていた
口いっぱいに押し込まれている
手術承諾の書類にサインする
もう私には、見舞うこととこれしかできない
あとは、祈り....
*
5日後、気管切開手術。
予定どうりに1時間半で病室に戻った
こころなしか、口元は腫れてみえる
部分麻酔なので、意識はある
医師が、名前を呼ぶ
「お母さん、来てますよ!」
彼の目は薄く開かれ、眼球が動いている
ガタン。
折り畳まれた簡易ベッドが床に倒れ
ふいに、大きな音がした
「よく、がんばったね」
彼は目覚め、目でうなずいた
私は満面に笑ったが、帰宅した
辛いのは彼、声帯を切られ声失った
*
数日たち見舞った
彼の顔はむくみがとれ
鼻筋の通った、本来の彼に。
手術前、鼻に呼吸器を入れていた
小鼻がふくらんでいた
今は、親ばかでオトコマエに見える
ヘルパーさんたちと
透明の文字盤と口パクで
意志疎通をとる練習を繰り返す、
彼
生きるチカラを感じ
病室を離れ
私は、泣いた...
2018.8.16