詩集「群れない猫」近日発行!

群れない猫

土屋容子の暮らしと詞花

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新しく生きる

「新しく生きる」

 

入院時 紙のように白かった顔は

赤みをおびていた

彼の首もとには、酸素吸入の為の

新しいホールが突き出ている

 

7月27日早朝、緊急入院した彼は

気胸と肺炎も併発。

鼻からの人工呼吸器では、タンがつまりやすく

いつ、呼吸停止してもおかしくない状況だった

 

出かける準備をしてると、私の電話が鳴る

不安をあおる電子音

彼の緊急入院を告げる内容だ。

直ぐに来られますか?

  はい、1時間ほどかかります

 

酷暑を避け、バスと電車で最寄駅に向かう

降りるひとつ前の駅で、又、電話が鳴る

  病院のひとつ手前の駅です

 

病室に着くと、鼻から直接チューブが入り

口にも太いのど奥下までのチューブがそうかんされていた

口いっぱいに押し込まれている

 

手術承諾の書類にサインする

もう私には、見舞うこととこれしかできない

あとは、祈り....

 

5日後、気管切開手術。

予定どうりに1時間半で病室に戻った

こころなしか、口元は腫れてみえる

部分麻酔なので、意識はある

医師が、名前を呼ぶ

「お母さん、来てますよ!」

彼の目は薄く開かれ、眼球が動いている

 

ガタン。

折り畳まれた簡易ベッドが床に倒れ

ふいに、大きな音がした

 

「よく、がんばったね」

彼は目覚め、目でうなずいた

私は満面に笑ったが、帰宅した

辛いのは彼、声帯を切られ声失った

 

数日たち見舞った

彼の顔はむくみがとれ

鼻筋の通った、本来の彼に。

手術前、鼻に呼吸器を入れていた

小鼻がふくらんでいた

今は、親ばかでオトコマエに見える

 

ヘルパーさんたちと

透明の文字盤と口パクで

意志疎通をとる練習を繰り返す、

 

生きるチカラを感じ

病室を離れ

私は、泣いた...

 

2018.8.16

 

 

 

 

 

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